果つる底なき (講談社文庫)

果つる底なき (講談社文庫)

江戸川乱歩賞受賞作。
謎の言葉を残し不可解な死を遂げた友人の坂本。その死に疑問をもった伊木は、坂本が調べていた不正融資、そして坂本の死について調査にのり出す。

組織のなかで信念を貫き悪をあばく個人。ありがちなはなしかもしれないがそこそこおもしろい。ただ、人が死に過ぎ。ちょっと冷めちゃうな〜。
『いまの世の中、上場会社の決算だって粉飾なんて当たり前だ。病院(上場企業でも赤字や債務超過に陥っている企業ばかりを相手にしている審査部の通称)の連中がどんなことをしているか知ってるか。決算からプレス発表まで都合のいいように作ってるんだぞ』というくだりがあった。タイムリー。

鉄扉を開けると、七月初旬のむっとする空気が足元になだれ込んできた。梅雨空はどんよりと重く、ここのところ降ったり止んだりという天気が続いている。午前十時。私は、融資先を訪問するために銀行ビルの裏口を出て、店から少し離れたところにある駐車場へ向かうところだった。土、日は人でごった返す渋谷も、平日の午前中となる街の人手はまだ少ない。とくに東急プラザのある表通りから一本入ったこの辺りは閑散として、回収前のゴミが収集場所から道路に溢れている。